【国を出れない】IDのないパレスチナ人の家に泊まって話を聞いてきた
前回記事
今回のイスラエルの旅で絶対にやろうと思っていたこと。
それは、パレスチナの人の家と、イスラエルの人の家の両方に泊まって、両方からイスラエルパレスチナ問題について考えを聞くこと。
その両方と直接話すことで、第三者である自分が客観的にみて考えることができるかなと思った。
まずはパレスチナの人の家に泊まって、現状を聞いてから、感じた問題点をイスラエル人にぶつけて考えを聞こうという魂胆。
今は便利な時代で、Couchsurfingという外国で無料でホストをしてくれる人を探せるアプリがあるのでそれを使って、泊めてくれる優しい人を探した。
※以下、ちょっと長いけどぜひ読んでください
パレスチナ人の家へ
パレスチナ自治区のラマラに住むFayez Kawamlehさん。
彼はパレスチナ伝統のダンス「ダブケ」のダンサーの30才。イベント会社で働きながら、週末はダブケのダンスを練習する日々。
待ち合わせ場所に彼は車で現れて、僕をピックアップしてくれてセキュリティのしっかりしたパレスチナの中では高級なマンションに案内してくれた。
これが彼の部屋。キッチン、寝室、ベランダ、リビングルームなど揃っているとても綺麗な家。4人家族が暮らせそうなくらい広い。さもいい暮らしをしているのかなと思わされる彼だけど...実は
国内に閉じ込められた生活
彼はパスポートを持っていない。
ドバイのアブダビで12歳まで生まれ育って、そのあとパレスチナ人のIDを手に入れるために家族で移り住んできた。
しかし、インティファーダというパレスチナ民衆のイスラエルに対する蜂起が起こって、イスラエル政府が態度を硬化させたことにより、ファイーズさんはID発給をストップされた。
だから彼は何のIDも持っていないので、外国に行くことができない。
正確には外国に行けるけど、それっきり行ったらそれっきり帰ってこれないそうだ。
父親と妹はIDもらえたけど、母親と彼はもらえず、イスラエル政府によって引き離されている状況なのだ。
彼が所属するパレスチナ伝統のダンスグループは毎年数ヶ国で海外公演を行うそうだが、
メンバーの中で彼だけがツアーに参加できないそうだ。彼だけがIDを持っていないから。
彼になすすべはなく、外国に行かないという行動をイスラエル政府に対する彼なりのレジスタンスとして捉えているそうだ。
警察も関与しないパレスチナの現状
ベランダでタバコを吸いながら、パレスチナの現状、僕の質問に彼は全て真摯に答えてくれた。
area Bは パレスチナとイスラエル共同でパトロールするところ
彼が住むラマラという都市はarea Cで、そこにはパレスチナの警察も入ってこれないらしい。
だからといって、イスラエルの警察がいるのかと思って街を見渡しても見当たらない。
実は、彼いわく、イスラエル政府はここの治安とかはどうでもよくて、何が起こっても関与しないらしい。たとえ殺人が起こっても、誰も助けにこない。パレスチナの警察も入ってこれないから。
さらに、その地域に建てられた建物は全てイスラエルの許可がないので、いつでもイスラエルの都合で壊したりできるらしい。
何でこんなことをするかって言うと、最終的にその土地をイスラエルの土地にしたいから。
そこにユダヤ人用の定住居を建てて、電気代も安く、タダに近いような値段にしてユダヤ人を呼び込んで、ユダヤ人が住む割合を無理矢理あげようとしてるんだって。
ここはユダヤ人が実質住んでる地域だよって世界にアピールするために。
イスラエルのことは批判してはいけない
ある日、早朝の4時頃にドアをノックする音でファイーズさんは目覚めた。
ドア穴を覗くとイスラエルの警察がドアを激しくノックしてる。「開けなかったら壊すぞ!」と言って。
開けると部屋の中を検閲して、職業なども聞かれたが、Fayezさんの家に疑わしいものは何もなかったので、彼は家に戻ってドアを閉めていろと言われた。
しかし、となりに住む人は活動家だった。
ドア穴から覗くと、警察はその人をドアの外に出して拘束した後、部屋の中を検閲して、最終的に彼をどこかへ連れて行ってしまった。
罪状は詳しくは分からないが、彼は9ヶ月も牢屋に入れられたそうだ。
彼は現在も刑期が伸びていて、牢屋に入れられているらしい。
イスラエルの警察がパレスチナ人を逮捕するのに2つ理由がある。
①武器の所持←これはまあまだ分かる。
②イスラエルに批判的な意見を言う、Facebookに書くなどしたから←完全に言論の自由の侵害
この活動家は②が原因で捕まったらしく、批判的な姿勢を崩さないため牢屋に入れられたままらしい。
正直、俄かには信じがたい話だった。
完全に人権の侵害だ。
僕はこの街に来るのにもバスを使ったが、街を移動するごとに検問があった。
僕たち旅行者はパスポートを見せればOK。時には顔パスで大丈夫だが、
パレスチナ人はバスを一々降りてIDを見せなければならない。
そして何か問題が起こると、検問所を封鎖して通れなくする。
彼は、「イスラエルはパレスチナ人を家畜のように扱っている」と言っていた。
彼らの言いなりで全て決められてしまう。
彼の話し方は落ち着いていたが、彼の口調には静かな怒りが感じられた。
イスラエルとの問題についてどう思ってる?
イスラエル問題について意見を聞いてみたところ、
彼の意見は終始して
「イスラエルは宗教を政治道具として使っている」だった。
ユダヤ人が神から約束された土地だからエルサレムに住むと言うのは分かるけど、何故それでもともと住んでいた俺たちを追い出す?一緒にエルサレムに住めばいいじゃん。
さらにそれ何千年前の話だし、誰がそんなの決めたんだよ。
本当に信心深いユダヤ教徒ならわかるけど、テルアビブ(首都)とかに住んでるユダヤ人なんて全然信心深くない人たちばかりで、
その人たちは土地を拡大したいばかりに、「神から約束された土地だから」という宗教を政治利用しているだけだろ。
勝手に壁を建てて、検問を作り、移動を制限して、徐々にパレスチナ人の人口を減らし、ユダヤ人の人口を増やし、実質的にユダヤ人の土地にしようとしている。ひどいやり方だ。
(以上彼の言葉)
彼はユダヤ人やユダヤ教に対しては反感も持っていないが、それを政治利用するイスラエルに反感を持っているのだ。
この彼の言葉を理解するには、シオニズムという言葉を理解することが必要です。
シオニズムとは、ユダヤ教の約束の地とされるシオンの丘(エルサレムのこと)にユダヤ人だけの国家を樹立することを目指すユダヤ人の近代的運動のことで、第二次世界大戦後いろんな政治的後押しを受けてイスラエル国の樹立につながりました。世界中でホロコーストに対して同情する流れができていたことも大きかったと言われています。
しかし、そのシオンの地にはもともとパレスチナ人が住んでいる。ので追い出してしまおうというわけです。
このシオニズムには全てのユダヤ人が賛同している訳ではありません。民族主義的にユダヤ人の国家を建設しようとするシオニズムは、ユダヤ教の教えに反しているそうです。(参照http://inri.client.jp/hexagon/floorA6F_hd/a6fhd100.html)
まとめ
Fayezさんの話は、本当に衝撃的で、客観的に話を聞いても明らかにイスラエルのやっていることは間違っていると思わされる内容だった。
最後別れる時、もし将来IDをゲットしたら日本に行くよと言ってくれたけど、彼はどういう気持ちだったんだろう。。
今まで日本にいた時は、パレスチナのニュースとかを見ても「ひどいなあ」とは思うけど、正直他人事に感じていたけど、こうして友達ができて直接話を聞いてみると、本当に事の重大さを実感して真剣に考えるようになりました。
これを読んでくださってる皆さんにも少しでも僕の感じた事が伝われば幸いです。
パレスチナの現状を詳しく知りたい方はぜひこの記事を読んでください。衝撃でした。
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次回は、イスラエル人の家に泊まって、今回感じたイスラエルの問題についてイスラエル人はどう思ってるのか直接聞きに行きます。
最後まで読んでくださってありがとうございました。