人生最長・50kmを歩いた日。
巡礼も半ば。足の怪我がどうしても治らず、ある大きい街で1日休むことにした。
足の痛みは少しマシになったけれども、それまで一緒に歩いていた友達に1日分置いて行かれてしまった。
自分のペースを守らないとより怪我が悪化して最悪巡礼を諦めざるをえなくなってしまうかもしれないので、決して無理はできない。
そこから1週間ほど、ほとんど一人で歩く孤独な日々が続いた。
もともと僕は一人でいるのは苦痛に感じる方ではないし、むしろ好きな方。
一人で歩くと自分のことに集中できるし景色を楽しむ余裕もできるから好きだった。
けれども毎日8時間ずっと一人で歩いているとそんな余裕もなくなり、歩いている時間もつまらなく感じられて、ただただ辛い時間になっていた。
そんなある日、怪我する前に一緒に歩いていた日本人の女の子のさとみさんから連絡が。
「明日アストルガ(という街)まで歩いてスペイン巡礼終わり!まおさんぶっ飛ばしてアストルガ来てよ笑」
大学の関係で巡礼途中で日本に帰らないと行けなくて、明日がその最終日だそう。
実は、このアストルガという街は今いるレオンという街から50kmも離れている!!
この万全でない足で50kmも1日で歩けるかな。それも15kgもの荷物を背負って。。
不安ではあったけど、最後さとみさんに会いたかったし、前に一緒に歩いていた仲間も皆その街で待っているそうなのでなんとしてでも追いつきたい気持ちの方が強かった。
足が大丈夫だったら行く!との返信をした。
翌朝、朝6時に出発。
歩き始めて30分くらいで足が痛くなってきた。
やはり靴が合わない。サンダルに履き替えて、痛み止めを飲んで歩き続けた。
しばらくすると、痛み止めが効いてきたのか足の痛みが消えた。
皆に会えるっ!というワクワクする気持ちで歩いていたら楽しくなってきて、足も嘘のように軽くなり、めちゃくちゃ早歩きで歩き続けた。
サンチアゴデコンポステーラまでも残り300kmを切ったみたい。
調子よく歩いていたらいつの間にかお昼に。
なんと朝から一切休憩なしで35kmも歩いていた。
いつもだったら、20kmも歩けばバテてたのに。誰かのために歩こうって気持ちでいると、こんなにも体の反応が違うのかということに自分でも驚いた。
お昼休憩にコーラとアイスを食べて、また歩き出す。残り15km。
日差しが容赦無く照りつけて、汗で服もびっしょり。
残り5kmくらいになって足が痙攣し始めた。
身体が悲鳴をあげているのが分かったけど、もう最後は意地。
気力を振り絞って50km歩ききった。
アストルガの宿に着くと、
「マオ本当に来たのか!!ユーアークレイジー!!」
韓国人のジェイが待っていてくれていた。
さとみさん、ゆみさんも驚いてくれて、ジュースを奢ってくれた。
50km歩いた疲労でもう足は鉛みたいになって一歩も動けなかったけど、久しぶりにみんなに会えたのが本当に嬉しかった。
その夜はみんなでさとみさんのお別れパーティー。
久しぶりに仲間と食べるご飯は本当に美味しかったし楽しかった。
さらに宿でボランティアをしている日本人の方に「疲れたでしょう」と優しくしてもらい、なんとカレーをご馳走になった。
半年ぶりに食べた日本のカレーの味。涙が出るほどうまかった。
おそらくこの日以上に歩く日は人生でもうないだろうってくらいこの日は歩いた。
重い荷物を背負って50kmも歩くなんて、自分のためだけだったら絶対に歩けてなかっただろうなと思う。
でも、友達に会いたい!っていう気持ちでいたら不思議と歩く足にパワーがみなぎってきて歩き切ることができた。
人間の身体って本当に面白い。全部気持ち次第なんだな。
歩いている時にずっと聞いていた大好きな宇多田ヒカルの曲。