スペイン巡礼・石に込めた巡礼者の思い
巡礼を歩き始めて数日。
初日のピレネー山脈越え以降は徐々に道が平坦になってきて、また身体も巡礼に慣れてきたので楽しく歩けるようになってきた。
巡礼中の一番の楽しみは朝日。
巡礼ではサンチアゴコンポステーラを目指してひたすら西の方角に歩いて行くので、毎朝、太陽が背中側から昇ってくる。
ふと後ろを振り返ると、真っ赤な朝日がゆっくり地平線上から昇ってきて、道が徐々に明るくなっていく。太陽のその圧倒的な存在を毎朝実感して、拝みたくなる。
こんなに素晴らしい朝日を毎日見れるということこそが、一番の贅沢なんだなあと思う。
綺麗な雲と印象的な一本の大きな木。
道沿いに実っているベリーやイチジク。
小鳥になった気分で、ブルーベリーをつまんで食べてみると、とても甘くて美味しい。
こういう風に道沿いの植物に注目しながら歩いていると楽しいし、自然と仲良しになった気持ちを覚える。
自然からの頂き物だけじゃなくて、巡礼中はいろんな人からたくさんのものをもらった。
巡礼者のために、道沿いに寄付制で飲み物や食べ物を用意してくださってる人。
こんなにかわいく飾り付けしてくれていたら、元気でるよね。
顔も見たことないけど、毎日こうやって巡礼者のために用意してくれている人がいるんだなあと思うと、あなたのことは知らないけど本当にありがとうと心の中で呟きたくなった。
巡礼者同士でもみんな「ギブアンドギブ」の思いやりを持っていて、
僕が足を痛そうにしている時に「この薬が効くからあげるよ!」と薬をもらったり、「ご飯作ったから一緒に食べない?」とご馳走になったり、本当にみんなに優しくしてもらった。
逆に僕にできることは何だろうと考えて、いろんな場面で優しくできるように心がけるようになっていた。
カミノデサンチアゴの道中ではこのような石を積み重ねたものをよく見かける。
カミノデサンチアゴを歩く人は、それぞれ歩こうと決めた理由も様々。
人生の転機に悩んで歩き始めた人。
家族や愛する人を失って弔いの意味で歩いている人。
罪滅ぼしのために歩く人。
何か自分の重荷に感じるものや捨てたいもの。家から持ってきた石に、巡礼者はその思いを込めて、巡礼道中に置いてくるそうだ。
巡礼者も10代から80代まで男も女も年齢も様々。でもいろんな人がいろんな思いを抱えて同じ目的地に向かって歩いているんだと思うと感慨深いものがあった。